2014年 07月 31日

861 野生ラン

 野生ランについて

 海抜ゼロmから高山帯にかけて、自然状態下の本に自生する山野草のなかで、被子植物、単子葉類に分類された植物群ちゅう、ラン科に属する植物を野生ランと呼んでいる。またラン科植物に似た山野草、例えば、シシンラン(イワタバコ属)、スズラン(ユリ科)などのランのつく植物もあって、しばしラン科と混同された時代があったが、本来の野生ランと特徴が異なり、植物専門家であれば、一見して植物名を明らかに開示できる。
 「可愛らしい」「珍しい」という理由から、ラン愛好家の注目の的となり、さらに希少価値とが重なって、高度成長期、全国各地に自生している野生ラン争奪戦が勃発、ラン科植物盗掘の憂世にさらされた。それは野生ランという植物繁殖地消滅を意味し、たちまち日本全土からあの可憐なランは姿を見せることはなかった。
 私もランに注目興味を抱き、山岳渓流に棲んでいるイワナ山釣り場探索と時を同じく、ランとの遭遇を夢見て、人知れない山地ランを求めて探索する。ランマニアと違っているのは、ランを写真に収めることが目的であり、当然、ランを現金に換える行為はやらない。
 具体的なラン撮影として青森県から順次南下、秋田、岩手、宮城、福島に到る。特に日本海側に属する秋田ではザイルで岩壁をぶら下がり、その岩場に自生するラン植物の多様性に有頂天となりしばし我を忘れるかのような、ラン世界にはまり込んだ。

 ウチョウランとの出会い

 ウチョウランを始めてみたときから30年余の歳月が経過している。蝶が天空を舞う優雅な姿に似ている様子から、羽蝶蘭という和名がつき、それは自生地が山地奥山岩壁にしか着生せず、まさにラン中のランと断言してよかろう。それに異論を唱える人はおるまい。またラン科植物のなかでも、地方により自生地別による変異を生ずるウチョウランの特徴があって、ランマニアの欲望をくすぐる要素を持つことで、ラン愛好家の羨望の的となった。それ故にこぞって野生ラン盗掘の中心的存在となったのは前述に申し上げた通りである。
 具t来的なウチョウランには白花、白紋点、斑、葉黒点紋などの変異紋が花部分、葉部分に生まれることがある。これらはランマニアウチョウラン収集家にはなまらない魅力となる。当時、1草10万円、あるいは50万円、日本で珍種2草だけしかなければ、その価値観は1草500万円という値段で取引されたバブル時代の狂乱世界が展開された。このことがさらにウチョウラン乱獲に拍車をかけた事実が残されている。

 1年1草

 私のラン科植物写真撮影をここまで細々ながら続行している。以前のような地方ラン行脚は軍資金不足で実施されていないそれでもせめて1年に1草を目標にランとの出会いを楽しんでいる。あれほどにぎわった、それからのウチョウランはブームは過ぎ去り、かれこれ20年余、ラン自生地での盗掘はほとんど皆無だ。それは山に行くことなく、バイオ技術による試験管ウチョウラン新種培養が可能になった理由による。
 現在、ラン自生地はどうなっているのであろうか。かつての乱獲で壊滅的打撃を受けたであろうけれど、盗掘をまぬかれたラン科植物が生き残っているかを調査するため、遠山氏と同行する。
 
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廃道の山道を歩く。
今日の目的地は遠方稜線コル下まで沢ずたいを辿り歩かねばならない。
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沢を詰め上がる。
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沢を水源まで忠実に探し求めて歩く。
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岸壁にへばりつく野生ランを探す。
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次々に現れる岸壁を丁寧にランを探す。
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やとのことでウチョウラン発見。
盗掘を免れた貴重な自生地である。
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野生のウチョウラン。
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直上型ウチョウラン、岸壁に着生すること数十年、それは花の数で理解できる。
広い岩壁に一輪咲いていた。
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優雅に舞うウチョウラン。
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ランチタイムでくつろぐ遠山氏。
いつも聞くことは、あと何年山歩きを出来るかと尋ねれば、決まって答える「あと3年はやる」と返事が返ってくる。
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ナラタケから養分をもらうショウキラン。
腐性ランだから葉を持たない。
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自生して間もないウチョウラン。
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83歳になった遠山氏。足取りは軽く岩場をスムーズにこなすから立派だ。
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下山中、必死になって高山植物を探す遠山氏。
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尾根下降すれば今日の野生ラン探しは終了する。

 
 ウチョウラン再会を果たして

 遠山氏との同行二人による野生ラン探しにの結果、かろうじて野生のウチョウラン数株のみを見ただけで終わる。それはかつて岸壁全面をランで飾った往時の繁栄は全く姿を失い、残念ながらラン科植物の現実を垣間見ただけのみ終了する。どうにかこうにかランという植物の種をかろうじて維持しているだけであった。それでもひっそりと生きていたことに対して、敬意を称したい。それはまことに遺憾に思いながらも、現在、ラン科植物の大半が絶滅危惧種に指定されたなかで、なんとか野生ランたちの復活を願うばかりだ。しかし、現状はランにとって厳しく、復活は難しい。せめて日本本土に自生する山地ラン種を後世に残ることを切に希望する。
およそ100の1まで枯渇減少してしまった野生ランではあるけれど、私の山地ラン写真撮影夢を捨てる事無く、今後も野生ラン探しの旅は続けるつもりでいる。

古い記憶

 こうして私と遠山氏との昔の記憶を辿る野生ラン探し旅は無事の終わる。私はラン自生地場所は異なるものの、およそ30年余前に全盛期だったウチョウラン自生場面を再び再現したくての旅であった。また遠山氏も20年ぶりの当地訪問だった。案の定、目的地でのウチョウラン自生再現は夢と消えた。30年、20年という歳月は古い記憶をよみがえらせることはなく、ひたすら沈黙を守ったままで、時代という時間に埋め飲み込んでしまった。現在という有りもままの自然はそこにあったが、古いかつての岩壁を飾る彩りはなく、殺風景な様子にかなりの衝撃を受けた。しかし、消滅した野生ラン意外に、注目されている植物を発見した喜びは大きい。「来年、この岩場を飾る新天地植物を見に行こう。」と私は遠山氏に声をかけ岩壁に背を向けて、急角度で下降する獣道を頼りに辿り下山した。

※写真撮影日、7月30日。
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by yuuyuugaku-ueno | 2014-07-31 11:38 | 山野草図鑑


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