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新・自然遊悠学

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2014年 01月 22日

680 定(じょう)イワナ

 若いころ

 ヒマラヤの高峰を目指して山岳トレーニングに励んでいた若い時代、岩登り、沢登りを中心に山に登っていた。物心ついたころから釣りはやっていた。それは平野部の釣りでヤマベという魚であった。自宅が戦争疎開者であった理由で、少年時代に釣り上げたヤマベは母親の手料理ヤマベ甘露煮となり、我が家のおかずになる。また長期夏休みではナマズ、フナライギョ漁に励み、すべててんぷらになる。魚さばきは私の仕事、3枚におろす作業はこの時代に覚えた。

 16歳、奥秩父滝川沿いにある登山道を歩き釣橋小屋(現在は倒壊)に宿泊、その際、小屋にあった囲炉裏を囲むように見知らぬ魚を串焼きにしている釣り人らしい年配の人がいた。魚の登ることができなう滝があるのに、塩焼きにされた魚はどのようにして滝を越えた奥地まで棲息可能なのか、平野部で育った私にはその理由は不明であった。

 山釣り開始

 極地における適用性不可の烙印を押され、手首の腱鞘炎、失意のどん底二重苦を救ってくれたのが、少年時代から釣り好きだった理由もあり、当時未開であった山岳渓流を歩くことを決意する。我がふるさと奥秩父、栃木の渓流をホームグランドに、費用があるときには時には県境越え会津、バイクにまたがり奥羽山地までイワナ遍歴をやった。

 定イワナ

 新潟県飯豊連峰釣行中、見知らぬ男とであった。「定イワナ釣ったことあるか。」と尋ねられる。「そんなイワナ知らない。」と、ぶっきらぼうに答える。男は中年イワナ釣師で、謎めいたせりふを得意そうに告げる。「滝壺で生まれ、イワナの一生を淵だけで終わる渓魚が定イワナだ。」さらに「とんでもない奥地にもイワナはいる。」男は得意そうに告げた。

 奥地へ

 血気盛んなプライド高い私の山釣り闘志をかきたてた謎の男との出会い以降、得意だった沢登り技術を駆使し魚止め滝以遠挑戦は開始される。しかし滝上部にはイワナがいたり、いなかったり、男のいう定イワナらしい渓魚は見つからなかった。確かに奥山滝淵に魚影を発見、釣り上げて下部イワナと比較しても、体側にある朱点が鮮やかに浮き上がっているだけで、このイワナが定イワナである証拠にはならなかった。

 謎のイワナの正体

 それから飯豊男とは再会していない。滝と滝に挟まれたわずかな空間に棲息するイワナはいる。それは滝上流にイワナが棲息している場合に限り、滝淵だけで暮らしているイワナなのだ。私のこれまでの山釣り経験から判断して、「こぼれイワナ」こそ定イワナの正体と結論を得るにいたる。イワナはどこまでいってもイワナであり、人間のように足なしだから滝を越えることはできない。幻のイワナはかなりの悪条件ゴルジュ帯棲息は滝上イワナの存在があってこそ定イワナも棲むことができる。

by yuuyuugaku-ueno | 2014-01-22 16:53 | 岩魚物語


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